2015年07月15日

木造仮設住宅


和歌山県木造住宅生産体制強化推進協議会で和歌山県応急木造仮設住宅配置計画提案書の報告を行いました。

『大地震が起こり、家屋が倒壊し、火災が巻きおこり、津波がせまる中、
文字通り這うようにして、ようやく避難所に辿り着き、
家族知人の安否情報に日々、泣き、悲しみ、喜び、絶望に打ちひしがれ、希望を持ち、
何十日も避難所生活を送りながら、仮設住宅が建設されるのをひたすら待ち続け、
出来上がった念願の仮設住宅は、結露がひどく、暑く寒く、隣の音が筒抜けでプライバシーもなく・・・。』

日本人、いや世界中の人々が人間の無力さを叩きつけられた
4年前の「あの日」から私たちは何かを学ぶことは出来たのでしょうか・・・。

「東海・東南海・南海3連動地震」、及び「南海トラフ巨大地震」が
近い将来に高い確率で起こると言われている今、
和歌山と大震災は切っても切れない関係にあります。

住宅を設計する際も、施設を設計する際も
津波浸水域が示されているハザードマップで敷地を確認するのが、
施主にとっても設計者にとってもごく当たり前の作業となっています。

震災時に自らの命を守るのは当然のことですが、
震災後の暮らしをリアルに想像したことがあるでしょうか。
震災後のことを考えずに和歌山のまちづくりはありえないと言って過言ではありません。

東日本大震災の被災地、岩手、宮城、福島の東北3県において
応急仮設住宅が5万戸あまり建設されました。
そのうち約8千戸が木造の応急仮設住宅として建設されました。

従来のプレハブ鉄骨造に比べて、木造仮設住宅の評価は高く、
暖かさや木の持つぬくもりが厳しい状況の中での住民に安らぎを与えられているいう報告もあります。

和歌山県においては、現在予想されている「東海・東南海・南海3連動地震」、
また「南海トラフ巨大地震」発生時には、
県内において4万~8万棟近くの応急仮設住宅の建設が必要とされています。

和歌山県は杉・檜の紀州材の生産県として豊富な森林資源があり、
木材加工業者も多いことから応急仮設住宅の木造化の可能性を検討することは重要な課題です。

そこで従来のプレハブ鉄骨造仮設住宅だけではなく、
和歌山県版の木造の仮設住宅の建設を目指し、
和歌山県木造住宅生産体制強化推進協議会

(建築士会、建築家協会、建築士事務所協会、防災センター、建設労働組合、森林組合、県林業振興課、県建築住宅課、木材協同組合連合会により構成される組織)

内に
平成24年に和歌山県応急木造仮設住宅合同検討委員会を設置し、
建築3団体と県住宅建築住宅課が構成委員となり、
和歌山県版の応急木造仮設住宅の計画、設計の検討を開始しました。

以降現在まで3年に渡り、
平成24年度には、和歌山県応急仮設住宅標準設計提案報告書、
平成25年度には、和歌山県応急仮設住宅詳細設計図面集、
平成26年度には、和歌山県応急木造仮設住宅配置計画提案書、
を作成しました。

工法の検討から、基本設計、実施設計、工事費積算と作成し、
県内の各自治体に呼びかけ、実際に震災後仮設住宅の用地となる敷地の情報を提供してもらい、
仮設住宅の配置計画を行うまでに至りました。

しかし、平成27年7月時点では、和歌山県が応急仮設住宅の建設に関する協定を締結しているのは
「一般社団法人プレハブ建築協会」のみとなっており、
「災害発生の日から20日以内に着工」という災害救助法を守るとすれば、
事実上、和歌山県内での応急木造仮設住宅の建設は不可能となっています。

なぜなら、木造仮設住宅を発注する相手が存在しないからです。
プレハブの場合は、プレハブ協会という受け皿がありますが、
木造の場合、それに当たる組織がないのです。

改善していかなければならないところです。  


Posted by 田渕設計 at 14:00Comments(0)キダ

2015年07月08日

欠陥住宅&改正建築士法

弁護士さんに依頼されて、
いわゆる欠陥住宅の現地調査に行ってきました。
(涼しい事務所でパソコンに向かって図面を描いているだけではないのです…。)

事前に建物の持ち主の方に了承をもらっていたので、
遠慮なく壁を破壊しての調査を行いました。

写真は調査開始まもなくの頃の写真なのですが、
終了時には中々の破壊っぷりになっています。


(スタッフの小谷となかなか気の利く大学生アルバイトのK君です。)

現地でいろいろ調査をして、
報告書にまとめて、弁護士さんにお渡しするのですが、

その後、裁判になるのか和解するのかは弁護士さんと建物持ち主の判断になります。
裁判になると、本当に長くかかります。
2~3年はざらです。5~6年かかることもあります。

大体の場合において、こういうもめている物件は、

1.設計図がほとんどない。(枚数が少ない)
2.工事見積り書が適当。
3.工事中の写真がない。
4.設計図を描いた人と一度も会ったことがない


この4点がセットになっています。
(自分たちからすると、とても信じられない状態なのですが、
そんな状態で工事を開始する人達が現にいるのです。)
なので、この逆をいけば欠陥だのでもめる可能性は少なくなるはずです。

そこで、とうとう法律が改正されました。
改正建築士法が平成27年6月25日に施行されました。

大きな改正の柱は、
設計、工事監理の書面による契約が義務化だと思います。

工事だけでなく、設計に関してもきちんと書面で契約しなさい、という法律です。
設計はサービスですよ、
っていうのはダメですよ、
ということです。
(よくよく考えればサービスで出来るはずないですからね。)

これは、建築士事務所側だけが負う義務ではなく、依頼者側の義務でもあるので注意が必要です。

今は一定規模(300㎡)以上の建物に対する義務化ですが、
いずれ規模による縛りはなくなり、全ての建物が対象になると思います。
(なぜ初めから全ての建物ではないのか、
それは、全ての建物に適用するのに反対する勢力が存在するからです)

これを読んだ人は、とにかく上に書いた4点セットを忘れずに。

(HPのエッセイも実はこっそり更新してますので良かったらお目汚しに。)  


Posted by 田渕設計 at 21:47Comments(0)キダ